「HSP/HSS目線で語る職業のメリット・デメリット」について当事者の方々に書いていただいています。
今回は保育士のご経験を千春さんに語っていただきました。

HSS型HSPのお仕事経験談No.34:千春さんについて
まず最初に千春さんについてご紹介します。
ご年齢 | 37歳 |
HSP? HSS型HSP? | HSS型HSP |
ご職業 | 保育士 |
職場環境 | 保育園勤務 |
雇用形態 | 正社員 |
就業期間 | 2006年4月~2012年2月 |
HSS型HSPのお仕事経験談No.34:お仕事内容

お仕事内容について教えてください。
具体的な業務内容は日々の保育のほか、クラス保育内での計画や記録、各行事の企画委員、園内での研修担当などもありました。

どんな環境で働いていましたか?
0歳から6歳までの乳幼児を預かる、定員100名程の私立認可園に勤めていました。
勤務時間は7:00~20:00の中でのシフト制で、基本的には8時間勤務です。
各クラス2名~4名の複数担任制で私もクラス担任をしていました。
一緒に働いていた職員の年齢層は20代から50代と幅広く各世代がまんべんなく揃っていた印象です。
男性保育士も数人いました。
活発で社交的なタイプの方が多かったように思います。
また職員の親睦を深めるイベントも多く、就業後の飲み会や打ち上げも定期的にあり、ほぼ出席していました。

このお仕事を始めたきっかけは何ですか?
保育士になる前は地方公務員として事務職に就いていましたが、業務内容や人間関係から体調を崩し退職しています。
公務員を目指した時は安定した仕事に就きたい一心でしたが、自分のやりたいことを改めて考えたときに「もっと人に関わる仕事がしたい」と思い、幼児教育の専門学校で資格を取得し保育園に就職しました。
HSS型HSPのお仕事経験談No.34:お仕事のメリット

どんなところがHSS型HSPに合っていましたか?
感受性の豊かな子どもたちの心の変化に気づきやすい、というところが1番のメリットだと思います。
子どもたちは言葉ではなく表情や態度、泣き声などで気持ちを表します。
そういったときに1つの行動から多角的な視野を持って想像し、汲み取っていくことで子どもに寄り添うアプローチが取れました。
HSP気質の感度の鋭さを持っているからこそ、同じように感受性の強い子どもたちへの理解も深まり、心と心のやりとりにやりがいや喜びを感じることができました。

心子どもたちにとっては自分を理解してくれたっていう安心感も得られますよね。
また、保育では「受容、共感」する力が求められる場面が多いです。
子どもの対応に限らず、保護者対応、職員間のチームワークなど多岐に渡りますが、その点についてもメリットが多くあります。
複数担任制のため、どうしても保育の進め方や子どもの姿の受け取り方で意見が異なりチームワークが複雑化することがありました。
そのような時に個々の職員の気持ちを深く考慮して共通点を探し、仲を取り持つなど、気質を生かすことでうまく対応できたように思います。
子どもの喧嘩の仲裁も同様ですね。
また上司や保護者からの要望も敏感に察知して受け取るため、信頼を得やすかったです。
親しくなると毎日のちょっとした保護者の方との会話も楽しいものでした。
相手のタイプによって自分から積極的に関わりを持ったり、距離をとったりという相手に合わせた関わり方ができることもHSS型HSPの気質のメリットではないかと思います。

積極的にコミュニケーションをとるのが得意な千春さんだからこそ、お子さんだけじゃなく保護者の人とも親身にお話ができたんですね。
保育園では毎年新しく入園する子どもたちがいます。
そして、日々子どもたちが成長してどんどん新しい姿を見せてくれるため、変化があり刺激的な毎日を送ることができます。
このあたりは好奇心や刺激を求める気質に向いていると思います。
保育や教育は時代と共に変化していくため、研修も推奨されます。
この点も外部との接触があり、刺激的で探求心が満たされるため楽しく参加できました。
職員の中でも保育の質向上のために勉強している方もいて、自分が積極的に行動すれば意見交換や情報交換ができます。
なので職員同士の関わりでもモチベーションをあげることができ、仕事への意欲に繋げられました。
先にあげたように職員同士の交流も盛んなため、そのなかで自分と共感できるような人を見つけられたらより充実させることができると思います。
HSS型HSPのお仕事経験談No.34:お仕事のデメリット

HSS型HSP、千春さんに向いてないなと感じた点を教えてください。
常に人が周りにいて、音や動きが絶えない点が辛いです。
子どもを見るという仕事のため同時に30人以上見ることもありますが、喧嘩がないか、泣いている子どもはいないかなど、常にアンテナを張っているため神経が休まりません。
そのようなときは五感が常に稼働している状態なので、退勤後は何も手につかず疲れ果てていました。
日々の保育では、細かい点に気が付いてしまうゆえに仕事を増やしてしまい、手が抜けないために自分を追い込んでしまうことがよくありました。
他の職員も同じように忙しいため、結局助けを求めることもできず1人で苦しい状況になることが多かったです。
周りの職員も「疲れた」という言葉が当たり前に聞こえる職場でしたが、皆の疲れると自分の疲れるは何かが違っていて、自分は追い詰められたように感じることがよくありました。
新年度にはクラスが進級し、担任の入れ替えや新入園児もいるためしばらくは園全体が落ち着きません。
そんな時も子どもや職員、園全体の雰囲気を感じ取り、自分が体験していないことでも同じように疲れてしまいます。
親と離れる時の子どもの深い悲しみの感情などを大きく感じ取ってしまい、仕事として落ち着いて対応しますが精神面ではぐったり疲れるということがよくありました。
経験と共に慣れてはきますが、そのような場面でもHSPの共感力が働き、辛く感じてしまいます。

1日に何人もの子どもたちと接するのは、心身ともに疲れてしまうのは想像できます…。
いくら子どもが好きでも、大変だと思います。
持ち帰りの仕事が多いところも苦労しました。
職場は基本的に常に子どもがいるため落ち着いて作業することができず、家に持ち帰って仕事をすることが多かったです。
そこでも1つの事柄を深く考えこんでしまうので、プライベートでの気持ちの切り替えがうまくできませんでした。
職員同士の交流が盛んなところも、刺激を求めて参加したものの気を遣っただけで終了したということもよくあり、面倒に感じることもありました。
定期的な親睦会も自分の気分によってはとても億劫に思うのに、参加すると愛想よく人と接してしまいます。
そのため本心と行動が折り合わず「私は何をしているんだろう」と自己否定の感覚に陥ることもありました。

現在の働き方について語っていただきました。
出産を機に退職しましたが、常に走っている感覚があったためどこかで一度保育を離れたいとも思っていました。
また、保育士はやりがいが大きい一方でプライベートにも持ち込んでしまうため、私には子育てと両立することが難しいと感じました。
現在は子どもが学校にいる時間帯のみ保育士として働いています。
パート職員なため自分の意思で決められることは制限されますが、勤務時間が短くプライベートとのバランスも安定しています。
HSS型HSPのお仕事経験談を聞いて感じたこと
小さな子どもたちと接するのは、それだけで神経を使うことだと思います。
千春さんが、ご自身のプライベートを考慮してパートで保育士のお仕事を続けられていることが印象的でした。
私生活とのバランスを取りつつ、ご無理なくお仕事をする道を見つけた千春さん。
まずはご自身の生活を第一に、保育士さんとしてご活躍できることを願っています。

千春さん、ご経験を語っていただきありがとうございました!
