「HSP/HSS目線で語る職業のメリット・デメリット」について当事者の方々に書いていただいています。
今回は官公庁職員のご経験をSさんに語っていただきました。
※匿名希望でしたので、便宜上Sさんと呼ばせていただきます。
HSS型HSPのお仕事経験談No.23:Sさんについて
まず最初にSさんについてご紹介します。
ご年齢 | 30代前半 |
HSP? HSS型HSP? | HSS型HSP |
ご職業 | 官公庁職員 |
職場環境 | オフィス勤務 |
雇用形態 | 契約社員 |
就業期間 | 2015年9月~2020年3月 |
HSS型HSPのお仕事経験談No.23:お仕事内容

お仕事内容について教えてください。
仕事内容は来庁者への接客がメインで、具体的には来庁者への案内、窓口受付、電話対応、入力事務などです。
仕事のうち9割が接客でした。

お仕事を始めたきっかけは?
お堅そう、自分に合っていそうと思い応募しました。
私は大学を卒業してから2年間のうち3ヶ所で働きましたが、逃げるように辞めてしまうことが特徴で、仕事が長続きしませんでした。
(今となってはHSPの影響もあるのかなと思いますが …)
3ヶ所目を退職後、体調を崩して心療内科に通い3年程無職でした。
その後短期アルバイトをして、今度は長期的に働きたいと思いこの仕事の求人を見つけました。
事務補助ということで応募しましたが、実際に働いてみると9割接客でした。

どんな環境で働いていましたか?
一緒に働いていた人数は約30人です。
男女比は2:8で女性の職場でした。年齢層は20代~50代で、主婦の方が多かったです。
HSS型HSPのお仕事経験談No.23:お仕事のメリット

どんなところがHSS型HSPに向いていましたか?
HSPに向いていたと思うのは、基礎を覚えたり、先輩の仕事を見て覚えたりする時間が充分にあったことです。
これは仕事を始めた時期が繁忙期ではなかったため、運がよかったですね。
最初の仕事は入力事務からでしたが、同じことの繰り返しが多く、数をこなすことで覚えていけました。
イレギュラーなこともありましたが、基礎を覚えたうえで深く追及するものでした。
その場合お客さんに時間が掛かることを了承いただければゆっくりやっても大丈夫でした。
次第にイレギュラーな仕事は、積極的にやると喜ばれるようになりました。

職場の雰囲気はいかがでしたか?
職場の雰囲気も私に合っていたと思います。
分からないまま進めて失敗するより、その前に聞いてほしいという雰囲気の職場でした。これはお客さんに迷惑が掛からないようにするためでしょう。
最初のうちは接客も先輩と一緒に行って横で見ていたり、1人で対応しても分からなければ戻ってきて聞いていました。
覚えることがたくさんありましたが、だんだんと知識として身に付いていきました。
深く追及する姿勢が好まれ、同僚からは
「勉強熱心だね」
「ミスが少ない」
という声を頂けるようになり、HSPの良い特徴が出ていたと思います。
ある程度仕事を覚えたあとは、自分のやり方で任せてもらえるのも私に合っていました。
とある業務のマニュアルを自主的に作って、皆で共有できるようにしたこともあります。
お客さんからも「丁寧に話を聞いてくれてありがとう」と言って頂いたり、私を指名して来ていただいたお客さんも何人かいました。
これは、事前の電話対応でよく話を聞いてもらったので、お願いしたいという理由からでした。
他の人はなかなか指名されることはないので密かに自慢。笑
この仕事をするまでは接客に苦手意識があったのですが、「丁寧」「相手の話をよく聞く」という長所を活かして、私らしい接客ができるようになっていったと思います。

Sさんにしかできないこと、周りを見渡して動けるからこその接客、学ぶことが多いです。
HSS型HSPのお仕事経験談No.23:お仕事のデメリット

HSS型HSPであるがゆえに辛かった点を教えてください。
辛かったことは、大きな声で怒鳴るお客さんがいたことです。
9割が接客なので「怒られるのも仕事のうち」でした。
要望に応えられず、断らなければならないときなどにフロアに響き渡る声で怒鳴られたことがありました。
同僚の皆さんからも心配して頂きましたが、「気にしない」「切り替える」ということがなかなかできず、辛かったです。

仕事内容で気になった点はありましたか?
曖昧な事柄(グレーゾーン的なもの)を、そういうものとして納得できないことが辛かったです。
同じことの繰り返しが多い仕事ではありますが、マニュアルが定まっておらず、人によってやり方が異なるというものがありました。
(しかも難しい…)
いつの間にか変更点があったり、疑問点があって確認すると「いい」と言う人と「だめだ」と言う人がいて、判断基準が人によって異なっていました。
何とか結論を出して進めましたが「これで本当によかったのだろうか」という思いはぬぐえませんでした。
「よく気がつく」「深く追求する」特徴のあるHSPにとっては、このような事柄への対応で心の落とし処が見つからず、苦しかったです。

お仕事をお辞めになった理由は何でしたか?
辞めた理由はいくつかあります。
まずネガティブな理由としては、先ほどあげた曖昧な事柄への関わりや責任が重くなる可能性があったことです。
関わるようになるのは私だけではないのですが、おそらく断れない状況になるため辞めることを考えました。
もう1つは威圧的な態度をとる同僚がいたこと、その同僚に対する上司の対応です。
その同僚は自分は数多くミスをするのにそれを認めず、且つ人のミスには厳しくて感情的な言動をとる人でした。
私はその同僚に言われたことで、数日職場に行けなくなってしまったことがありました。
その後極力関わらないようにしていましたが、他の人に威圧的な言動をとっているのを見る聞くのが辛かったです。
上司には何度か相談し配慮もして頂きましたが「悪い人ではない。(私の)気にしすぎだ」というのが結論でした。
ちなみにその上司と同僚は仲が良く、同僚は威圧的な言動はもちろんとらないため、私はもやもやした思いを抱えていました。
次第にその同僚の動きを見て極力関わらないようにすること、その同僚に注意されないようにやることが私の仕事の目的になってしまい、とても辛くなりました。

人間関係をどう改善していくか、対処していくかは続ける上で1番悩まされるところです…。
ネガティブなことを書いてしまいましたが、ポジティブな理由もあります。
この仕事を約4年半続けてきて別の仕事をしてみたいと思うようになりました。
契約社員としての仕事は一通りできるようになりましたし、色々な経験をして成長させてもらえたので本当に感謝しています。
現在退職して3ヶ月が過ぎましたが、正直この選択が正しかったのかは分かりません。
しかし退職してほっとしていること、体調を崩す前に自分で離れるという決断ができてよかったという思いがあります。
4年半仕事を続けられたことを自信にして、今後は昔からの夢であったカウンセラーの仕事をやっていきたいと思っています。
HSS型HSPのお仕事経験談を聞いて感じたこと
接客は気持ちを切り替えていかないとどんどん自分自身が辛くなっていきますよね。
お客さんを選ぶのが難しいのは接客業のネック。
ですが、お辞めになった理由でポジティブなことも話してくださっていることがとても印象的でした。
このご経験を活かして次のステップに進もうとしているSさんが前向きで、読んでいて励まされました。
ぜひまたいつか、カウンセラーのお仕事についても語っていただけたら嬉しいです。

Sさん、ご経験を語っていただきありがとうございました!