「HSP/HSS目線で語る職業のメリット・デメリット」について当事者の方々に書いていただいています。
今回は地方公務員のご経験を、ぶんたんさんに語っていただきました。
HSPのお仕事経験談No.3:ぶんたんさんについて
まず最初はぶんたんさんについてご紹介します。
ご年齢 | 30代前半 |
HSP? HSS型HSP? | HSP |
ご職業 | 地方公務員 |
職場環境 | オフィス勤務 |
雇用形態 | 正規職員 |
就業期間 | 2012年4月~2020年3月 |
HSPのお仕事経験談No.3:お仕事内容

どんな環境で働いていますか?
ある政令指定都市の事務職員として勤務していました。住民税、介護保険、国民健康保険を担当する部署を経験しています。
それぞれ制度は違いますが、共通して
を行っていました。

このお仕事を選んだのはなぜですか?
人の役に立つ人間になりたいという気持ち強かったためです。
東日本大震災を経験したことで、生活の基盤にかかわる公務員になればたくさんの人を根底から支えることができるのではないかと考えるようになり、志望するに至りました。

職場環境について教えてください。
一緒に働いている人の人数や年齢は部署によってかなり差があります。
私が所属していた部署では、一番少ない部署が12名、一番多い部署が50名弱でした。
残業が多かったり仕事の共有がしづらい部署では、男性や若い人の割合が高く、残業が少なかったり仕事の共有がしやすい部署では、子育て中の女性が多くなる傾向がありました。


HSPのお仕事経験談No.3:お仕事のメリット

HSPに向いているところを4つにまとめてくれました。
相談に来た人の相談したいことがすぐにわかる
役所の窓口では様々な人から相談を受けることになります。
相談しに来る方が制度のことを理解していることは稀で、役所で何をしたいのか、何を聞きたいのかさえ整理できていないまま来庁するというケースも珍しくはありません。
振り返ってみると、私は他の職員よりも早く的確に相手の意図することに気付けていたと思います。
おそらくですが
というHSPの性質がプラスに働いたと思っています。
ミスを未然に防げる
役所が行う事務は住民の方の生活と強く結びつくものであるため、ミスをしてしまうと住民の方に大変な影響を与えてしまうことになります。
私は事務処理を進める中で誤りに気付くことが多く、処理手順の中でミスを生みやすい箇所を発見することも得意でした。
「じっくり考えて理解しようとする」「細かいところに気が付く」というHSPの性質に助けられ、未然にミスを防げたことはとても多かったと感じています。
収入に対する不安要素が少ない
公務員は身分保障がかなりしっかりしているため、よほどのことをしなければ解雇されることはありません。
さらに自治体が無くなるということも考えにくいため、職を失う可能性が極めて低いです。
不安を感じやすいHSPにとって、収入に対する不安要素が少ないという点はメリットになると思います。
私自身、仕事をするなかで「仕事がなくなるかもしれない」とか、「給料が払われないかもしれない」といった不安には一度も悩まされなかったのは大変ありがたいことだったな、と感じています。

ぶんたんさんのおっしゃる通り、収入が不安定だと不安や悩みが大きくなります。
フリーランスになるとき、私もお金の不安は消えませんでした。
いろんな人の人生に触れ、奥深い経験ができた
役所には様々な年齢・境遇の方が訪れます。就職以前の人生で出会ったことのないような方の話を伺う中で様々なことを知り、考える機会に恵まれました。
お話を伺うのが辛いときもありましたが、いい意味での刺激もたくさん受けました。
社会の幅広さや奥深さを学び、自分自身の引き出しを増やせて、かけがえのない経験をさせてもらえたと思っています。

多くの人と接することがストレスに感じすぎる人もいますよね。
そこから吸収できるものを見つけようとした、ぶんたんさんの姿勢…見習います。
HSPのお仕事経験談No.3:お仕事のデメリット

辛かった点は5つ伝えてくれました。
異動が多い
公務員は定期的な異動があります。私が勤めていた自治体では、3年に1回のペースで部署を移ることになっていました。異動すると「転職したんじゃないか」と思うくらい、環境も仕事内容も変わります。
私が勤めていたのは比較的大きな自治体だったため、通勤先が変わり、同僚や、対象となる住民の方も変わりました。
また、どの制度もつくりが複雑で、内容を理解するには長い時間と多くの気力を消費します。そしてやっと仕事をスムーズにこなせるようになった頃には、次の異動先を考えなければなりません。
大きな幅の変化が頻繁に訪れることがとても辛く、「これをずっと続けるのは難しい」と感じたことが退職の一因となりました。

公務員の異動が、ここまで大きい影響を与えるなんて知りませんでした。
「転職したんじゃないかと思うくらい」という表現から、負担の大きさがひしひしと感じられます。
電話・窓口対応が多く、じっくり仕事ができない
役所では日々膨大な事務処理を行うのですが、あわせて電話・窓口応対をしなければなりません。その件数もとても多いため、作業が頻繁に中断されます。
私は本来、しっかり考えた上で作業に取り掛かり、集中して丁寧に仕事を進めたいタイプなのですが、こういった状況では全くそれができず、仕事中イライラすることがしょっちゅうでした。
家に帰るころにはかなり疲れていて、心身ともに調子を崩すことも珍しくはありませんでした。

HSPの気質から、ぶんたんさんのように、しっかり考えて作業に取り組みたい人は多いのかもしれません。
クレームが多い
電話でも窓口でも、とにかくクレームが多いです。もちろん、こちらの不手際に起因するものもありますが、理不尽な文句を言われたり、人格を否定されるようなことも、しばしばあります。
かかってきた電話を取ったら、いきなり怒鳴られたこともありました。こういうことが起きると、かなりダメージを受け、なかなか気持ちの切り替えもできず、回復に時間がかかります。
何日も引きずってしまい、体調不良につながってしまうこともありました。
制度と住民の間で板挟みになることがある
住民の方からは様々な要望が寄せられますが、制度上不可能なため、お断りすることもたくさんあります。
役所が取り扱う事務は、法律や条例等で権限や内容が細かく定められていて、その決まりを外れた決定はできません。
本当に困っていて相談に来た方に対して、絶対に誰かの助けが必要な状況だとわかっていても、何も助けてあげられないこともあります。
そういったときはとてももどかしく申し訳ない気持ちになり、自分が落ち込むこともありました。
仕事の責任が重く、プレッシャーが強い
役所の仕事は住民の方の生活と密接にかかわるものであるため、間違いは許されません。1つのミスが多くの住民の方に影響を及ぼす場合もあり、1つ1つの決定にかかるプレッシャーはかなり強いものでした。
新人のとき新システム導入の担当になったのですが、仕事が膨大な中で大きな判断を求められる機会がとても多く、精神的にかなり疲労し、うつ病になって休職することになってしまいました。

現在についてもまとめてくれました。
私はこの3月に退職しています。
HSPの要素のおかげもあって仕事自体はきっちりこなすことができ、上司からもいい評価をいただいていました。
適正としては問題なかったと思います。
しかし感受性の強さやまじめさ、責任感の強さなどが自分に対してマイナスに作用して、精神的なダメージが積み重なり、昨年の冬、不眠や気分の大きな落ち込みなどの症状に悩まされるようになりました。
かつてうつ病を発症した経験もあり、「このまま仕事を続けていたら、自分が壊れてしまうだろう」と考え退職を決断しました。
安定した収入がなくなり、周囲からも「もったいない」と言われることも多いですが、心身ともにとても穏やかな暮らしを得られたので、退職したことに後悔はありません。
HSPのお仕事経験談を聞いて感じたこと
異動の少ない部署がHSPに向いているんじゃないかな、と漠然と思ってはいたものの公務員の異動で、こんなに仕事内容や環境が変わってしまうとは知りませんでした。
最後のお言葉にもありましたが、ぶんたんさんが穏やかに過ごせる生活が何よりも大切で、守るべきものです。
HSPの怖いところは、うつ病などの精神疾患に繋がりやすい点だと思います。ぶんたんさんがご自身の異変を見逃さず、決断なさったことは私も勇気づけられました。
役所をはじめ、行政にお世話にならない人はいないはずです。
何かと落ち着かない日々が続いている中、私たちの生活を支えてくださっている方々に、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

ちなみに、私が「正社員にこだわって働かなくでもどうにかなる」と考え始めたきっかけになったのは、派遣社員になってからです。
≫ HSPが派遣社員に向いている理由を解説します【正社員じゃないとダメなの?】
