「HSP/HSS目線で語る職業のメリット・デメリット」について当事者の方々に書いていただいています。
今回は日本語教師のご経験をKさんに語っていただきました。
HSS型HSPのお仕事経験談No.6:Kさんについて
まず最初にKさんについてご紹介します。
ご年齢 | 20代後半 |
HSP? HSS型HSP? | HSPとHSS型HSPの中間型 |
ご職業 | 日本語教師 |
職場環境 | 学校勤務 (4月からはコロナの影響で在宅) |
雇用形態 | 非常勤(週3勤務) |
就業期間 | 2017年10月~2020年4月 |
HSS型HSPのお仕事経験談No.6:お仕事内容

お仕事内容について教えてください。
株式会社が運営する日本語学校で非常勤講師として働いていました。
学校によって雇用形態、経験などによって少々変わりますが、基本的に授業準備、授業、授業の引継ぎは必ずあります。
経験豊富な方であれば、スケジュールの管理、新人の先生へのフォローなどが加わり、専任(正社員の教師)の場合は学校運営の仕事などもあります。

お仕事を始めたきっかけは?
国際関係の仕事に就きたかった私は大学で国際関係の勉強をしながら、副専攻で日本語教育を学んでいました。
初めはなんとなくでしたが、勉強すればするほど日本語を外国語として考える面白さに魅力を感じ、言葉に敏感だった私は自分の特徴を生かせる仕事だと考え、日本語教師になりたいと思うようになりました。
しかしその当時の日本語教育業界は、非常勤からスタートする場合が多いです。
収入に不安を感じ一度は一般企業に就いたものの、すぐに日本語教師の世界へと飛び込んでいきました。

どんな環境で働いていましたか?
教員は50名程度(専任・非常勤含め)、事務員10名程度でした。
20代〜60代と幅広いですが、20代は3名で、20代後半の私は未だに一番下です…。
9割女性で、転職や定年を機に日本語教師になる方が多いので、20代の男性はなかなかいません。
HSS型HSPのお仕事経験談No.6:お仕事のメリット

どんなところがHSS型HSPに向いていると感じますか?
自分にあった働き方を選べるところがHSPにとってメリットだと思います。
日本語学校の場合3ヶ月ごとにクラスが変わるため、非常勤は3ヶ月ごとにシフトが変わります。
またオンラインレッスン、対面でのプライベートレッスンなど学校以外の場所でフリーランスとしても働けるので、自分の環境や体調に合わせた働き方ができる仕事だと思います。
ただ授業の数=給与に直結しかねないので、そこは注意しなければいけません…

おっしゃる通り、自分の状況に合わせて働き方を調整できるのはフリーランスの大きなメリット。
と同時に働いた時間や作業量が給与に反映するので、セルフマネージメントが大切になりますね。
Kさんご自身に合っているなと感じたポイントは何ですか?
分析が好きなところです。
日本語学校のほとんどが日本語を日本語で留学生に教えるのですが、教えるためには教師自身が文法について理解していないといけないので文法分析を必ずします。
普段当たり前のように使っている日本語を外国語として考えるのはすごく大変で時間がかかるのですが、深く掘り下げて知識を深めるHSPの私にとっては楽しい時間です。
ときどき同僚と勉強会をするのですが、お互いの考えやアイディアを共有することで色々なアイディアや考えに触れることができるのが一番好きなことでした。
1を聞くと考えを広げられるので、いつしかアイディアマンと呼ばれるようになりました。

アイディアマン!
Kさんの才能ですね。
私は語学関連の仕事を2つしているのですが、HSPの気質と言葉を扱う仕事は相性が良いなって実感しています。
Kさんの挙げてくださったポイントもしっくりきます。
HSS型HSPのお仕事経験談No.6:お仕事のデメリット

HSS型HSPに向いていないなと感じた点を教えてください。
日本語学校はチームティーチングという日によって先生が変わる体制で授業を行う場合が多いです。
そのため1人でもスケジュール通りに授業を終えないと、同じクラスの先生全員がスケジュール変更になることも… 。
自分がその原因になったときはもちろんですが、翌日に自分が担当するクラスのスケジュールが急に変更になったときはパニックでした。

ある程度慣れはありますが、急な変更に対処するのはHSPにとっては結構キツい…。
Kさんがお仕事で辛いと感じたことは何ですか?
日本語教師をして辛かったことが3つあります。
1つ目は私が経験の浅い教師であることと、HSP度がかなり強いからかもしれませんが、深く考えるので授業準備にかなり時間がかかります。
メリットで文法分析が好きとお話しましたが、授業は文法以外に読解や聴解、漢字などがあります。
そして文法も1つとは限りません。
一度に複数のことを同時に処理しようとしてしまったり、やらなければいけないことが多ければ多いほど深く考えることが多くなるので、授業準備に時間がかかり、何度徹夜をしたことか…。
2つ目は教室という狭い空間の中にいる時間が多いことでした。
授業になると、教室という狭い空間の中で様々な表情をしている学生を相手にしなければいけません。
体調が悪いだけかもしれないし、もう勉強したことがあるからつまらなそうにしているのかもしれません。
ですが授業の中で変化する表情から気持ちを読み取ってしまうので、授業中に自分の気持ちをコントロールするのが大変でした。
最後に作文の添削です。

作文の添削…?
作文は学生の気持ちや経験などを知ることができるのでとても好きなのですが、添削は辛かったです。
学生個人個人で多少の日本語のレベル差があるし、書いている気持ちが全て分かりません。
でも文字からどんな気持ちで書いて、何を伝えたかったのかを考えると止まらなくなってしまいます。
相手の気持ちが分からないし、教師の想像で直してしまうと個性がなくなってしまうし…こうなると添削が進みません。

学生と教師、どっちの立場でも考えられるがゆえの苦悩というか、葛藤…。
それが添削するときの辛さに繋がっていたんですね。
現在Kさんは日本語教師をお辞めになっています。
理由は何でしたか?
今の働き方ではHSPの特徴が悪い方向に向かってしまっていると思ったので、辞めることにしました。
特に教室という逃げ場のない密室で多くの学生の表情を見ることはかなり苦痛でした。
それに大勢だと自分もどこに気持ちを向ければいいか分からなくなってしまうので、自分にあった環境で日本語を必要としている一人に向き合いたいと思ったからです。

最後にこう締め括ってくれました。
辛かったことが多かった日本語教師生活でしたが、学んだことで働くことができて嬉しかったし、自分自身の働き方を考える良い機会になりました。
そして今月からフリーになりました。
まだまだ準備中ですが、今まで抱えていたストレスなくなり、心が楽になった気がします。
正直不安もありますが、これからは自分の心と会話しながら自分のペースでやっていきたいと思います。
HSS型HSPのお仕事経験談を聞いて感じたこと
日本語教師というお仕事は、Kさんにとって、そしてHSPの人にとって相性が良い部分が多いと感じます。
その反面どうしても1人で複数の人たちを対応しようとすると、いっぱいいっぱいになりがちです。
業務内容と働く環境。
片方だけ理想を追い求めるのではなく、どちらも許容できる(それか工夫次第で乗り越えられる)範囲を見つけるのも、働き方や適職を考えるうえで重要になりますね。
現在はフリーでお仕事なさっているということで、また違った大変さもあると思いますが、やっぱりフリーランスはHSPにとって気が楽なことが多いです。
清々しさがあるというか、ストレスの量がそもそも違うというか…。
今後のKさんのご活躍が楽しみです。

Kさん、ご経験を語っていただきありがとうございました!